新規開拓がうまくいく月と、まったく手が止まる月がある。
保険営業でよく聞く悩みです。この波の大きさは、才能や気合の差から生まれているわけではありません。
新規開拓がうまくいく人には、いくつかの共通点があります。なかでも土台になるのが、ターゲット(狙う相手の切り口)の絞り方です。この記事では、絞り方の切り口を5つ、具体例つきで示したうえで、「手応えのあったお客様3人」から自分の切り口を決める手順まで解説します。
新規開拓が「うまくいく人」と「いかない人」の違い
うまくいかない人ほど、対象が「全員」になっています。会える人に片っ端から当たるため、一巡すると次に行く場所が見えなくなります。これが「次の手が見えない」と感じる状態の正体です。
一方で新規開拓がうまくいく人には、次の共通点があります。
- 狙う相手の切り口を1つに絞っている
- 見込み客が生まれる仕組み(紹介など)を持っている
- 結果を振り返り、やり方を少しずつ直している
3つの共通点のうち、最初の土台になるのが「切り口を絞ること」です。対象が決まって初めて、どこで会い、何を話すかが定まります。
まずは「今の自分は誰を狙っているのか」を言葉にするところから始めましょう。ここが曖昧なほど、行動もぶれやすくなります。
なぜターゲットを絞ると新規開拓がうまくいくのか
ターゲットを絞ると、探す場所が具体的になります。「30代の子育て世帯」と決めれば、その人が集まる場や接点が思い浮かびます。対象が「全員」のままでは、この一歩目が動きません。
紹介も頼みやすくなります。「どなたか紹介してください」より、相手の顔が浮かぶ聞き方のほうが、紹介は出やすくなります。
「最近、独立してお店を始めた方はいらっしゃいませんか。開業まわりのお金の相談に乗ることが多いんです。」
さらに、同じような相手に繰り返し会うほど、トークや資料は自然と磨かれていきます。絞ることは、経験が積み上がる土台になります。
ターゲットの絞り方|5つの切り口と具体例
「絞りましょう」と言われても、どの軸で絞るのかが分からないままだと、結局「30代」「経営者」といった大きなくくりに戻ってしまいます。実務で使われている切り口は、大きく次の5つです。
| 切り口 | 何で絞るか | 例 |
|---|---|---|
| ①職業・業種 | 何をしている人か | 開業3年以内の飲食店オーナー |
| ②ライフイベント | いま何が起きたか | 第一子が生まれて1年以内の共働き夫婦 |
| ③経歴・共通体験 | 自分と何が同じか | 前職と同じ業界で働く人 |
| ④地域・コミュニティ | どこに集まっているか | 特定エリアの個人店 |
| ⑤紹介元 | 誰の隣にいる人か | 税理士の顧問先 |
5つすべてを使う必要はありません。自分が動きやすい切り口を1つ選ぶところから始めます。
①職業・業種で絞る
職業で絞ると、悩みの中身がそろいます。同じ職業の人は、収入の入り方も、抱えているリスクも似ているためです。
- 開業3年以内の飲食店オーナー
- 整骨院・訪問看護ステーションなど、小規模で運営している事業者
- 建設業の一人親方
- 20〜30代の美容師で、独立を考えている人
コツは、職業名だけで止めないことです。「経営者」では広すぎます。「従業員5人以下・開業3年以内の飲食店オーナー」まで削ると、会いに行く場所も、話す内容も決まります。
②ライフイベント(状況)で絞る
人がお金のことを考えるのは、生活が変わったときです。「いま何が起きているか」で絞ると、話を聞いてもらいやすくなります。
- 第一子が生まれて1年以内の共働き夫婦
- 住宅を購入して1年以内の30代
- 会社員から独立し、法人を立ち上げた直後の人
- 親の介護が始まった50代
- 相続や事業承継が数年内に見えている経営者
この切り口は、紹介を頼むときにも使いやすいのが利点です。状況で伝えると、相手は「あ、あの人だ」と具体的に思い出せます。
「最近お子さんが生まれた方や、家を買われた方はいらっしゃいませんか。生活が変わったタイミングで、お金まわりの整理をお手伝いすることが多いんです。」
③自分の経歴・共通体験で絞る
自分がこれまでいた場所を切り口にする方法です。相手からすると「事情が分かっている人」に映るため、話が早く進みます。
- 前職と同じ業界で働く人(元・自動車ディーラーなら販売や整備の現場、元・美容師なら美容業界)
- 自分と同じ年代で、同じように子育て中の世帯
- 同じ競技・趣味のコミュニティに属している人
経歴は誰にでもあります。「自分が一番、事情を分かっている相手は誰か」で考えると見つかります。
④地域・コミュニティで絞る
会いに行ける範囲で絞る方法です。移動時間が減り、評判も口コミも回りやすくなります。
- 特定の駅前・商店街にある個人店
- 子どもの保育園・学校の保護者コミュニティ
- 地域の商工会や、事業者が集まる勉強会
狭い範囲ほど、評判はそのまま次の紹介につながります。丁寧な対応が積み上がりやすい切り口です。
勤務先単位(職域)で絞る場合は、活動の可否や進め方が所属先ごとに定められています。動き出す前に、必ず社内ルールを確認してください。
⑤紹介元で絞る(誰の隣にいる人か)
「誰から紹介してもらうか」から逆算する切り口です。見込み客そのものではなく、その周りにいる人を先に決めます。
- 税理士から紹介される、決算や事業承継が近い法人
- 不動産仲介から紹介される、住宅を購入した人
- 社労士から紹介される、従業員を雇いはじめた中小企業
利点は、相手がすでに「お金の話をする準備」ができていることです。一方で、紹介元との関係づくりが先に必要になるため、立ち上がりには時間がかかります。
なお、切り口は1つの軸で決めきらず、2つを掛け合わせると輪郭がはっきりします。
「職業×状況」で掛け合わせた例:開業3年以内の飲食店オーナー(職業)で、はじめて従業員を雇った人(状況)。ここまで絞ると、どこで会えるか、何を話すかが自然に決まります。
自分の切り口を決める4ステップ|「手応えのあったお客様3人」から始める
切り口の型が分かっても、「自分はどれを選ぶか」は別の話です。ここは想像で決めず、これまでの実績から拾います。
- これまで会ったお客様を書き出す
- 手応えのあったお客様3人の共通点を探す
- 共通点を1行の切り口にして、仮に決める
- 小さく試して、続ける切り口かを確かめる
ステップ1|これまで会ったお客様を書き出す
直近1〜2年で会った相手を、思い出せるだけ書き出します。契約に至った人だけでなく、話が弾んだ人、相談が続いた人も入れてください。20人ほど並べば十分です。
ステップ2|手応えのあったお客様3人の共通点を探す
書き出したなかから、とくに手応えのあった3人を選びます。「話が早かった」「相手から質問が出た」「別の人を紹介してくれた」。そんな相手です。
この3人を、次の4つの軸で並べて見比べます。記入例です。
| 軸 | Aさん | Bさん | Cさん |
|---|---|---|---|
| 属性 | 34歳・飲食店オーナー | 38歳・美容室オーナー | 31歳・整体院オーナー |
| 状況 | 2店舗目を出した直後 | はじめて社員を雇った | 開業2年目 |
| 悩み | 自分が倒れたら店が止まる | 人を雇う際の備えが分からない | お金の相談相手がいない |
| 出会い方 | 取引先からの紹介 | 客として通っていた | 商工会の集まり |
この例なら、共通点は「開業して数年の小規模な事業のオーナー」「人を抱えはじめた段階」「身近に相談相手がいない」の3つです。3人に共通して出てくる言葉が、あなたの切り口になります。
3人がバラバラで共通点が出ないときは、人数を5人に増やすか、「出会い方」だけをそろえて見直してみてください。同じ入り口から来た人は、悩みも似ていることが多いためです。
ステップ3|共通点を1行の切り口にする
見つかった共通点を、次の型に当てはめて1行で言い切ります。
〔属性〕で、〔状況〕にあり、〔悩み〕に困っている人
先ほどの例を当てはめると、こうなります。「開業3年以内の小規模な事業のオーナーで、はじめて人を雇い、身近にお金の相談相手がいないことに困っている人」。
属性だけで止めないのがコツです。年齢や年収だけで決めると、話す内容までは決まりません。次の3つの視点がそろって、はじめて動ける切り口になります。
| 視点 | 問い | 例 |
|---|---|---|
| 属性 | どんな人か | 30代/個人事業主 |
| 状況 | いま何が起きているか | 出産/独立/事業承継が近い |
| 悩み | 何に困っているか | 教育費が読めない/備えが手薄 |
ステップ4|小さく試して確かめる
決めた切り口で、まず1か月動いてみます。確かめるのは次の3点です。
- その切り口に当てはまる人と、1か月で3人以上会えたか
- 会ったときに、話が具体的になったか
- 紹介を頼んだとき、相手が誰かを思い浮かべられたか
3つのうち2つが「はい」なら、その切り口は続ける価値があります。仮に決めた切り口は、動きながら見直して構いません。まず1つ決めて試すことが、次の判断材料をつくります。
ターゲット選定でやりがちな3つのつまずき
絞ることが大切とはいえ、やり方を誤ると逆効果になります。次の3点を自己チェックしてみてください。
- 絞りすぎて相手が見つからない、または広すぎて絞れていない
- 属性だけで決めて、相手の状況や悩みを見ていない
- 一度決めたきり、結果を見て直していない
とくに多いのが、絞りすぎと広すぎの両極端です。目安は「その切り口に当てはまる人を、いま10人思い浮かべられるか」。10人挙がらなければ狭すぎ、逆に「働く世代すべて」のように際限なく挙がるなら広すぎます。
決めた切り口は、数か月単位で振り返ります。手応えが薄ければ、隣の切り口へ静かにずらしていきましょう。先ほどの5つの切り口のうち、「職業」で行き詰まったら「状況」へ。軸を変えるだけで、見える相手は変わります。
絞ったターゲットを新規開拓につなげる
切り口が決まったら、次はその相手にどう出会うかです。見込み客と接点をつくる方法は複数あり、絞ったターゲットに合う手段を選ぶと効率が上がります。具体的な手段は「保険営業の見込み客の探し方7選」で整理しています。
なかでも、絞った切り口と相性がよいのが紹介です。狙う相手を具体的に伝えられるほど、紹介はもらいやすくなります。紹介を偶然で終わらせず仕組みに変える手順は「保険営業の紹介を増やす「仕組み化」5ステップ」でくわしく解説しています。
探し方と紹介を、絞ったターゲットとセットで回すことで、新規開拓は「うまくいく」状態に近づいていきます。
まとめ|まず「切り口を1つ」決めることから
新規開拓がうまくいく人の共通点は、狙う相手を絞り、仕組みを持ち、振り返って直していることでした。その出発点が、ターゲットの絞り方です。
絞る軸は5つ。職業・業種/ライフイベント/経歴・共通体験/地域・コミュニティ/紹介元です。そのどれを選ぶかは、これまでのお客様が教えてくれます。
- これまで会ったお客様を書き出す
- 手応えのあったお客様3人の共通点を探す
- 共通点を1行の切り口にする
- 小さく試して確かめる
いきなり完璧に決める必要はありません。まずは「手応えのあったお客様3人の共通点を書き出す」ところから始めてみてください。切り口が1つ定まるだけで、行く場所も話す内容も見えてきます。
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※本記事は営業・育成ノウハウの解説であり、特定の保険商品の推奨・比較や個別の保険勧誘を目的とするものではありません。保険業法など制度の取り扱いは変動する場合があるため、実施の可否や条件は所属先・公式の案内で確認してください。
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