反響への1通目には、返信が来ます。問い合わせへの回答だからです。難しいのは2通目からです。「その後いかがですか」と送った途端、返信が途絶える。多くの不動産営業が、ここでつまずきます。
返信が来なくなる原因は、連絡の頻度ではありません。連絡に用件がないことです。用件のない連絡は、相手にとって「返す内容を考えなければいけないメール」になります。だから後回しにされ、そのまま忘れられます。
この記事では、追客の考え方を整理したうえで、見込み客を温度感で3つに分ける設計、返信が来るメールの書き方4つ、沈黙した相手の掘り起こし方までを解説します。文例はそのまま書き換えて使える形で載せています。今日の追客リストから、1通目を変えるところまで持ち帰ってください。
追客とは|反響を来店・成約につなげる継続フォロー
追客とは、問い合わせ(反響)をくれた見込み客に継続的に接点を持ち、来店・内見・成約まで導く活動のことです。反響対応が「最初の1通」だとすれば、追客は「2通目からのすべて」を指します。
前提として、お客様は複数の会社に同時に問い合わせるのが普通です。同じ物件は他社でも扱えることが多く、物件そのものでは差がつきにくい。そのとき何で差がつくかといえば、担当者の対応です。条件を覚えていてくれて、役に立つ情報を先に届けてくれる担当者と、「その後いかがですか」だけの担当者。次に会いたくなるのがどちらかは、明らかです。
もうひとつ、追客を「気まずい営業連絡」と捉えないことが大切です。部屋探しや住み替えは、お客様にとっても途中で止まりやすい作業です。情報が多すぎて決めきれない、忙しくて検討が後回しになる。追客は、止まっている相手の検討を前に進める手伝いです。この捉え方ができると、連絡の中身が変わります。
追客で返信が来なくなる3つの原因
返信が来ないと、「自分は営業に向いていないのかもしれない」と考えたくなります。しかし原因の多くは、やる気や向き不向きではなく、追客のやり方の設計にあります。よくある原因は次の3つです。
| 原因 | 現場で起きていること |
|---|---|
| ①連絡に用件がない | 「その後いかがですか」だけのメールが後回しにされる |
| ②全員に同じ追い方 | 今週決めたい人と半年先の人に、同じ頻度・同じ内容で送っている |
| ③記憶頼みで途切れる | 忙しい週に追客が止まり、誰にいつ何を送ったか残っていない |
原因1|連絡に用件がない(「その後いかがですか」だけ)
「その後、ご検討状況はいかがでしょうか」。この連絡には、相手が受け取るものが何もありません。あるのは「返信しなければ」という宿題だけです。
検討が進んでいない相手ほど、この宿題は重くなります。「まだ決めていません」と書くのは気まずいからです。結果、返信は後回しになり、後回しはやがて沈黙になります。相手が悪いのではなく、返しにくい連絡を送っている側の問題です。
原因2|全員に同じ頻度・同じ内容で送っている
追客リストの中には、今週にも決めたい人と、半年先に引っ越しを考え始めた人が混ざっています。この2人に同じメールを送れば、どちらかの温度感には合いません。
今すぐ決めたい人には、週1回の新着案内では遅すぎます。逆に、情報収集を始めたばかりの人に毎日物件を送れば、しつこいと感じさせるだけです。頻度の正解はひとつではなく、相手の温度感によって変わります。
原因3|追客が担当者の記憶頼みになっている
追客は、始めることより続けることが難しい仕事です。案内や契約が重なった週に追客が止まり、気づけば1か月空いていた。誰にでも起きることです。
記録がないことも、途切れる原因になります。誰に、いつ、何を送り、どんな反応だったか。これが残っていないと、再開しようにも「前回何の話をしたか」から思い出すことになります。思い出せない相手への連絡は腰が重くなり、リストの下のほうで見込み客が眠っていきます。
追客の基本設計|温度感で3つに分けて追い方を変える
追客の設計は、リストを温度感で分けるところから始まります。分類はシンプルに3つで十分です。
| 分類 | 見分けるサイン | 接点の頻度の目安 | 連絡の中身 |
|---|---|---|---|
| 今すぐ客 | 希望時期が3か月以内。内見や資金の話が具体的 | 週1〜2回など短い間隔 | 新着・値下げなど、決断に直結する情報 |
| そのうち客 | 時期は未定だが条件がはっきりしている | 2週間〜1か月に1回 | 条件に合う物件の動き、相場の変化 |
| 情報収集客 | 時期も条件もまだ固まっていない | 1か月に1回程度 | エリア情報や探し方のコツなど、検討を育てる情報 |
頻度はあくまで目安です。大切なのは数字そのものではなく、分類ごとに連絡の中身を変えることです。今すぐ客には決断材料を、そのうち客には条件の変化を、情報収集客には検討を育てる材料を届けます。
温度感は、最初の問い合わせ時のやり取りで確認します。「お引っ越しの時期はお決まりですか」「他にもご覧になっている物件はありますか」。この2つを聞くだけで、おおよその分類ができます。温度感は時間とともに変わるので、反応があるたびに見直します。
追客の設計とは、「誰に・何を口実に・どの間隔で」連絡するかを先に決めておくことです。送る直前に内容を考える状態をなくすと、追客は続くようになります。
返信が来る追客メールの書き方4つ(文例つき)
設計ができたら、次は1通の中身です。返信が来るメールには共通点があります。ここでは4つに絞って、文例とあわせて紹介します。
書き方1|件名に相手の条件を入れる
「◯◯不動産の△△です」「お世話になっております」という件名は、開かれる理由がありません。件名に入れるべきは、自社名ではなく相手の条件です。
「【◯◯駅・2LDK・12万円以内】ご希望に近い物件が1件出ました」。この件名なら、開く前から自分宛ての情報だと分かります。自分の条件を覚えてもらえていること自体が、相手にとっては小さな驚きになります。
書き方2|1通1用件にして、答えやすい問いで締める
1通に用件を詰め込むと、どれにも返信が来なくなります。新着物件の案内なら案内だけ。内見の打診なら打診だけです。
締めの問いも変えます。「いかがでしょうか」は、何を答えればいいか分からない問いです。「今週の土日でしたら、どちらがご都合よろしいですか」のように、二択で答えられる形にします。返信のハードルは、問いの立て方で下げられます。
文例|2通目のメール(新着物件を口実にした追客)
件名:【◯◯駅・2LDK】ご希望条件に近い物件が1件出ました
「◯◯様 先日はお問い合わせありがとうございました。△△不動産の□□です。◯◯様がお探しの『◯◯駅徒歩10分以内・2LDK』の条件で、本日新しく1件公開されましたのでご案内します。前回ご覧いただいた物件より、キッチンが広い間取りです。人気の出やすい条件のため、ご興味があれば今週末に内見の枠を確保できます。土曜と日曜でしたら、どちらがご都合よろしいでしょうか。」
書き方3|連絡の口実は相手の条件から作る
「その後いかがですか」をやめるには、代わりの口実が必要です。口実は、相手の希望条件と市場の動きを掛け合わせれば作れます。使える情報は意外に多くあります。
- 条件に合う新着物件が出た
- 検討していた物件の価格・賃料が変わった
- 検討していた物件に他の問い合わせが入った、または公開が終わった
- 希望エリアの相場や供給に動きがあった
- 以前話していた懸念(学区・通勤・ローンなど)に関わる情報が見つかった
このリストを自分の「口実の在庫」として持っておくと、追客のたびに悩まなくなります。口実が尽きたと感じたときは、相手の条件のヒアリングが浅いことが多いです。条件を深く聞けている相手ほど、送れる情報は増えます。
書き方4|送る時間帯と間隔に配慮する
中身がよくても、深夜や早朝の連絡は印象を損ないます。メールやLINEも、通知で相手の生活に割り込んでいることは変わりません。相手の生活時間を想像して、常識的な時間帯に送ります。なお、契約の勧誘にあたり相手に迷惑を覚えさせるような時間の電話・訪問は宅地建物取引業法上も禁止されています。詳細は所属先の案内で確認してください。
返信がないときに、間を詰めるのは逆効果です。返信がなければ、次は間隔を少し空けて、別の口実で送ります。同じ用件の催促を重ねると、相手には圧力として届きます。「追う」のは接点であって、返信の催促ではありません。
沈黙した見込み客の掘り起こし方
1か月、3か月と途絶えた相手への連絡は、気まずいものです。ここでやりがちなのが、「ご無沙汰しております。その後いかがでしょうか」という再開です。これは沈黙する前と同じ、用件のない連絡に戻っています。
掘り起こしのコツは、空白の時間を謝らず、新しい用件で普通に送ることです。相手は担当者が思うほど、空白を気にしていません。部屋探し自体が止まっていただけ、というケースがほとんどです。
文例|3か月沈黙した相手への掘り起こしメール
件名:【◯◯駅エリア】年明けに向けて物件の動きが出てきました
「◯◯様 △△不動産の□□です。以前『◯◯駅・2LDK』でお部屋をお探しでしたので、ご連絡しました。このエリアは年明けに向けて物件の入れ替わりが増える時期に入り、◯◯様のご条件に近いものも出始めています。もしお部屋探しを再開されるご予定がありましたら、最新のご希望条件をお聞かせください。当時とご希望が変わっていても、そのままで大丈夫です。」
電話で掘り起こす場合も、考え方は同じです。「ご無沙汰のお詫び」から入らず、用件から入ります。「以前◯◯駅でお探しだった件で、条件に近い物件が出たのでお電話しました」と最初の10秒で用件を伝えると、相手は聞く姿勢を作れます。
一方で、何度接点を作っても反応がない相手を追い続ける必要はありません。口実を変えて数回送っても反応がなければ、頻度を落とすか、リストから外す判断をします。全員を同じ熱量で追うと、追うべき相手にかける時間が減ります。
追客を担当者の頑張りで終わらせない(記録と共有)
ここまでの内容は、個人の工夫で今日から変えられます。ただし、追客を安定させる最後の要素は、個人の頑張りの外側にあります。記録と共有です。
まず、記録を残します。誰に、いつ、何の口実で連絡し、反応はどうだったか。専用のツールでも、スプレッドシートでも、形式は何でも構いません。記録があると、追客が「思い出す作業」から「予定を実行する作業」に変わります。忙しい週に途切れても、どこから再開すればいいかが一目で分かります。
次に、うまくいった文面をチームで共有します。返信が来たメールの件名と本文は、その店の資産です。文例集として残せば、新人がゼロから文面を考える必要がなくなります。追客が担当者ごとの自己流のままだと、教えることも直すこともできません。
店長や経営者の立場なら、この点は特に重要です。追客が属人化している店では、担当者が辞めるたびに、追客中の見込み客リストごと商機が消えます。反響を増やす投資の前に、いまある反響を追い切る仕組みを整えるほうが先です。
なお、接点のあとのフォローをどう組み立てるかは、業界を問わず共通の技術です。保険営業向けに書いた記事ですが、「アポ取り後のフォローで成約につなげる方法」の考え方は不動産の追客にもそのまま応用できます。
また、見込み客と関係を築き「選ばれる」までの導線を、個人の感覚ではなく型として学びたい方に向けて、minalでは研修を提供しています。現場で成果を出してきた登壇者のノウハウを、他の人が再現できる形にして提供しています。
まとめ|追客は「口実の設計」で変わる
追客で返信が来なくなる原因は3つでした。連絡に用件がない、全員に同じ追い方をしている、記憶頼みで途切れる。どれも、やる気ではなく設計の問題です。
設計の中心は、温度感の3分類です。今すぐ客・そのうち客・情報収集客に分け、それぞれに合う口実と間隔で接点を持ちます。1通の中身は、件名に相手の条件を入れる、1通1用件で答えやすい問いで締める、口実は相手の条件から作る、時間帯と間隔に配慮する。この4つで変わります。
まず、直近の反響リストを温度感で3つに分けてください。そして今週送る相手を決め、口実をひとつ選ぶ。「その後いかがですか」を1通やめることが、追客を変える最初の一歩です。
minalについて
minal(ミナル)は、保険・不動産・金融など、お金を扱う仕事に特化した法人向けの教育研修サービスです。「売り上げに繋がる学び」をコンセプトに、個人事業主・経営者の方や、人事・研修担当の方の社員教育・人材育成を支えています。
お金を扱う仕事は、商品の知識だけでは成り立ちません。どうやってお客様と出会い、関係を築き、提案につなげるか。minalが扱うのは、知識系の研修では学びにくい、この実務の部分です。
現場で顧客獲得に取り組んできた方に登壇いただき、そのやり方を、ほかの方が再現できる形の研修にしています。「あの人だからできる」で終わらせないことが、私たちのテーマです。
あわせて読みたい:アポ取り後のフォローで成約につなげる方法/保険営業の紹介を増やす「仕組み化」5ステップ
※本記事は営業・育成ノウハウの解説であり、特定の物件・不動産取引の勧誘や推奨を目的とするものではありません。宅地建物取引業法など制度の取り扱いは変動する場合があるため、実施の可否や条件は所属先・公式の案内で確認してください。
